分子化学系 外間進悟 助教らのグループは、表面化学修飾によりカーボン量子ドットの光安定性と温度選択性を向上させることに成功しました

 分子化学系 外間進悟 助教らのグループは、カーボン量子ドット(CQD) (注1)の表面を化学的に修飾することにより、CQDの抱える問題である光褪色(注2)への耐性を飛躍的に向上させることに成功しました。具体的には表面未修飾のCQDでは1800秒間の光照射により18%蛍光強度が低下したことに対し、修飾後は光褪色がわずか3%に留まっていました。加えて、修飾後のCQDがpHなどの影響をほとんど受けずに温度にのみ高い感度を示すナノ温度計として機能することを明らかにしました。未修飾のCQDでは、その発光は温度の他に塩強度?pH?粘性?生体分子などの環境因子の影響を受けて変化していましたが、修飾後のCQDでは、温度への蛍光の応答性は変わらずに、環境因子の影響を10?100倍程度低減していました。この成果は、細胞内のような複雑な環境下であっても表面修飾されたCQDが信頼性の高い温度計として機能することを示した初めての例となります。開発されたプローブは、安定な発光を必要とする蛍光イメージング(注3)分野への貢献、温度が細胞機能を制御する仕組みを明らかにする温度生物学分野への貢献が見込まれます。

図1. (a)N,S-CQD-HPGの合成と蛍光特性。(b) N,S-CQD-HPGの温度計としての性質。

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本研究成果は、科学雑誌「Nanoscale」(外部リンク)に掲載されました。

<用語解説>
(注1)カーボン量子ドット:直径10 nm以下のナノサイズの炭素系蛍光ナノ粒子。従来の半導体量子ドット(CdSeやCdTeなどの金属系)とは異なり、非毒性?生体適合性?高い水溶性?安価な合成プロセスといった特長を持つため、さまざまな分野で注目されています。

(注2)光褪色:蛍光分子が長時間の光照射によって不可逆的に蛍光を失う現象。

(注3)蛍光イメージング:蛍光物質を用いて生体試料や材料の特定の構造や分子などを可視化する技術。

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